セミオーダーの辻ヶ花の着物

祖父に見せたかった振袖姿

2020年12月17日 16時52分



私が振袖を購入してもらったのは18歳の頃の事でした。
母の職場から着物の展示即売会の案内が来たのをきっかけに母と2人で見に行きました。
色取り取りの着物の海に圧倒されながらいくつか私が気に入ったもの、母が気に入ったものをピックアップして着付けてもらいました。
そんな中で私が選んだのはピンク色の生地に桜の模様が美しい振袖でした。前の年に祖父を癌で亡くしており、その祖父が愛した桜を彷彿とさせるお着物でした。

成人式は母の行きつけの美容室で着付けをしてもらいました。ベテラン美容師の着付けは手ばやく正確で着付けをされているだけの私が目を回すかと思いました。
着付け後に母に写真館へ連れていかれそのまま記念写真を撮りました。
当時、記念撮影など卒業写真くらいのものだと思っていたので母の配慮に驚いたのを覚えています。
しかし、後日出来上がった写真を見て祖母がとても喜んでくれたので記念撮影をして良かったと心から思いました。

記念撮影後に実家に戻り、1番に祖母に振袖姿を見せに行きました。着飾った私を見て祖母がとても喜んでくれました。
母方の実家にも顔を出し振袖姿を見せるとやはりこちらでも喜んでくれて、人生の節目にきちんと振袖を着て本当に良かったと思いました。

私の地元は小さな村落で同級生も30人ほどの小規模な成人式でした。
少し離れた学校へ進学していたためほとんどの同級生が中学卒業以来初めて会うというような状態で、少し成長したら同級生達に会うのは照れ臭くもありましたが、
幼い頃から知っている彼らとは時間の壁は無く近況報告もそこそこに記念写真を撮ったりして楽しいひと時を過ごしました。

新成人はもちろん、来賓の方々も全て知り合いというこじんまりとしつつも和気藹々とした成人式での私の役割は新成人の挨拶でした。
前もって役場の職員の方と打ち合わせをしており、用意していた挨拶を壇上で読ませていただきました。
式典終了後は、来賓の方と新成人での記念撮影、記念品の授与が行われ最後に全員で会食をして全ての行事が終了となりました。

帰宅すると、そのままの姿で地元の氏神様に成人のご報告とお礼のために参拝に行きました。
田舎だからか、祖父母、両親の影響か氏神様や仏様はそれなりに大切にしてきました。
最後にお墓とお仏壇にお参りするという形で亡くなった祖父に振袖姿を披露しました。

一度で良いから祖父にもこの姿を見てもらいたかったと今でも思います。

成人式以後私の振袖は、卒業式、従兄弟や友人の結婚式、婚約の際の顔合わせと節目節目で活躍し今でも大切にしております。
次は娘の十三詣りで着せてあげることが出来ればと思っております。